世界中のポール・ファンの昨今の話題といえば、ボーナスCDとDVDが付与された「スピード・オブ・サウンド」と「ヴィーナス・アンド・マーズ」のデラックス・エディションです。それまで聴くことのできなかった音源や見た事のない映像がふんだんに盛り込まれており、非常に満足のいくものでした。
この2作はポールにとってビートルズ解散後初めての、10年ぶりのアメリカを含むワールドツアーへの布石となるアルバムで、ステージで演奏する事を前提としたバンド・アレンジの楽曲が多く並んでいました。中でも「スピード・オブ・サウンド」はワールド・ツアー真っ最中にリリースされ、1976年ツアーのセットリストの大幅に組み込まれ、そんな中で「心のラブ・ソング」や「幸福のノック」が立て続けにチャートインするなど、大成功を収めた前年のツアーにダメ押しをするかの如く、1976年ツアーのステージを彩りました。
この「スピード・オブ・サウンド」及びそれに伴うワールドツアーは、ポールとしても素人然としたバンドを短期間にここまで育て上げたという感慨があったのではないでしょうか。アメリカンツアーを成功裏に終え、その余韻を受け、短期ヨーロッパ・ツアーと本国ロンドンでも3公演の短いツアーが組まれました。10年ぶりで緊張のアメリカと異なり、勝者の余裕ある立場での短期ツアーであり、今回「スピード・オブ・サウンド」のDVDで大々的にこのときの様子が収録されました。特に印象強いのが「Wings Over Wembley」と題された、わずか3公演のみのロンドン公演の映像に多くの時間が割かれている点です。バンド結成当初はメディアが批判的であるとして、あえて英国を避けてツアーを行なっていたものですが、この1976年のロンドン公演は、どうだといわんばかりに自信に満ち溢れた凱旋公演で、映像でも見られる通り、世界各国で大絶賛されていたウイングスの凱旋をロンドンのファンたちが待ち望んでいた様子がとてもよく伝わってきます。
本作は、そのデラックス・エディションでバックステージや断片的に見ることの出来たウイングスのウェンブリー3連続公演の初日、1976年10月19日公演を収録しています。会場の雰囲気、メンバーの様子など、あの映像に続くコンサートが本作なのです。この後、ウイングスは79年までツアーを行ないません。まさにこの地、ロンドンはウェンブリーが、絶頂期にしてワールドツアー最後の締めくくりとなったわけです。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。
WEMBLEY EMPIRE POOL LONDON U.K. October 19, 1976
DISC ONE
01. Venus And Mars - Rock Show - Jet
02. Let Me Roll It
03. Spirits Of Ancient Egypt
04. Medicine Jar
05. Maybe I'm Amazed
06. Call Me Back Again
07. Lady Madonna
08. The Long And Winding Road
09. Live And Let Die
10. Picasso's Last Word
11. Richard Cory
12. Bluebird
13. I've Just Seen A Face
14. Blackbird
15. Yesterday
DISC TWO
01. You Gave Me The Answer
02. Magneto and Titanium Man
03. Go Now
04. My Love
05. Listen To What The Man Said
06. Let 'em In
07. Time To Hide
08. Silly Love Songs
09. Beware My Love
10. Letting Go
11. Band On The Run
12. Hi Hi Hi
13. Soily (October 20, 1976)