■既発とは別音源
■ツアー屈指の高音質で完全収録
■「Ebony And Ivory」でスティーヴィー・ワンダーとの共演
サンプル音源
https://soundcloud.com/user-233178645-954223761/19891127-sample/s-8ecrw
1989年から始まったゲット・バック・ツアーはファンにとって非常に思い入れのあるツアーに違いない。1980年1月にポールが日本で逮捕されウイングスは自然消滅。10年のバンドの歴史でついぞ来日公演を行なうことはなくなってしまった。そしてタイミング悪くその年の年末にジョンが凶弾に倒れてしまう。その後ポールは自身も狙われるのではないかと恐れ、「ジョンが凶弾に倒れたからにはホトボリがさめるまでステージから遠ざからなければならない」とステージに立たなくなくなってしまった。80年代に出演したライブ・ステージはわずかプリンストラストとライブエイドの2度のみ。さらに日本の状況を鑑みれば、前科のある外国人を特例措置で入国許可したにも関わらず、よりによって日本で大麻所持で逮捕されるという信じられない失態をポールが犯したため、二度と日本の地を踏むことはないだろうと思われていた。それが1990年になり初来日ではないものの、初来日「公演」ということで日本のファンにとっても非常に思い入れがあるツアーではないだろうか。
ポールが10年ぶりのツアーを発表したのはまさに突然であった。現在のように情報がインターネットを通じて速報される時代と異なり、新作『Flowers In The Dirt』を発表し、ツアーに向けて入念なリハーサルを重ねていることは知られておらず、80年代それまでのポールを知る人たちにとってツアーの発表は驚きをもって受け止められた。1989年9月ノルウェーのオスロ(正確にはオスロから少し離れたドランメン)から開幕した10年ぶりのツアーは、最終的に日本公演を含む100公演以上をこなし、まさにポールがステージに帰ってきた事を印象付けた。当初は特にツアータイトルは命名されていなかったものの、自然発生的に「GET BACK TOUR(戻ってきたツアー)」と呼ばれるようになり、それが今では正式名称となっている。
まず話題となったのはビートルズの楽曲の再演である。ウイングスの初期は頑なに拒否し「Long Tall Sally」でお茶を濁していたものの、オーバーアメリカでは余興的に数曲採用、そして1979年ツアーでは「Got To Get You Into My Life」がオープニングに選ばれた。プリンストラストでは「I Saw Her Standing There」と「Get Back」を、そしてライブエイドでは「Let It Be」を歌うなど、徐々にビートルズ・ナンバーを歌うことの抵抗感が時代と共に薄れてきつつあったとはいえ、ここまで躊躇なくセットリストに並ぶとは想像だにつかなかった。1989年といえば実際に現役のビートルズを見た世代が40代前後の年齢である。ノスタルジーを求めて会場に足を運び、そこにノスタルジーではないリアルタイムのポールがいることで大成功を収めたツアーであった。
1989年のハイライトは11月から始まった北米ツアーであろう。それまで欧州をまわり満を持して乗り込んだアメリカは、実に1976年以来23年ぶりのコンサートである。その最初の地ロサンゼルスでは実に5連続公演が行なわれている。これはニューヨークにも勝る最大規模の連続公演である。本作はその中日に当たる1989年11月27日ロサンゼルス・フォーラム公演を収録している。この日は長期に渡るツアーの中にあっても特別な日のひとつで、会場にはマイケル・ジャクソンやスティーヴィー・ワンダーなどが顔を見せ、日本からも(日本公演が絶望視されていたためか)大勢のファンが訪れている。なぜこの日が特別な日であるかというと、アンコールでこの日二度目の「Ebony And Ivory」を演奏、スティーヴィーワンダーがステージに飛び入りしてデュエットを披露したからである。
この日スティーヴィーワンダーの出演予定はなく、単に観客のひとりとして会場にいたに過ぎない。そしてたまたまポールのツアーのレギュラーで「Ebony And Ivory」がセットリストにあったこと。通常はスティーヴィーのパートをヘイミッシュが歌っていた。実際に1回目の演奏ではポールとヘイミッシュとのデュエットで演奏されている。このような幸運な偶然が重なり、会場にスティーヴィーワンダーがいると知ったポールが、サプライズでその場でステージに上げたのである。「今晩はサプライズ・ゲストがいるよ」。スティーヴィーも突然のことで驚いたであろうが、快く引き受けステージにあがる。歌い慣れているポールと比べスティーヴィーもオリジナルを崩しつつアドリブをきかせて歌っている。ポールが途中「スティーヴィー!」と歌えよばかりに誘う場面もあり、スティーヴィーを立てつつ共に歌っているのが非常に伝わってくる。もちろん聴衆は大喜びである。演奏後「スティーヴィー、また後でね」と声をかけているのも微笑ましい。
前述のように、この日はスティーヴィー・ワンダーが飛び入りして「Ebony And Ivory」をデュエットするというサプライズがあったということで、アナログ時代に『Yesterday Today And McCartney』というタイトルが早くも存在していた。しかし音質はあまり良い物ではなく、それでも内容の珍しさからファンに間で広く知られていた。長らくこの日はこの音源しかなく、BCCのプレゼント・テープにもこのアナログ盤から「Ebony And Ivory」1曲が抜粋収録されたり、ピカデリー・サーカス・レーベルから『Perfect Harmony』というタイトルでも盤起こしで完全収録されていた。
しかし、本作は近年発掘された、それとは全く別音源である。そして音質は比べるべくもなく最高のもので、おそらく1989/1990年ツアーのオーディエンス音源においてはベストのひとつとして挙げられるクオリティを誇っている。この音質で、この歴史的な日を聴くことが出来るという幸運に感謝したいと思う。この新音源の唯一の欠点は「I Saw Her Standing There」と「Twenty Flight Rock」の曲間にカットがあり、そのカットが「Twenty Flight Rock」のイントロに若干ではあるが浸食している点である。わずかではあるが、この欠落部分は前述の既発音源で補完されており、通してコンサートを完全収録している。
1989年11月27日ロサンゼルス公演を、既発とは異なる別音源で完全収録。同ツアーの中でもベストのひとつとして挙げられるであろう最高のクオリティを誇る音質である。さらにスティーヴィー・ワンダーと共に「Ebony And Ivory」を歌うという特別な日ということもあり、この内容にしてこの音質、まさにマニア必携のコンサートである。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。日本語帯付。
Great Western Forum Los Angeles Inglewood, California U.S.A.
November 27, 1989
DISC ONE
01. Opening
02. Figure Of Eight
03. Jet
04. Rough Ride
05. Got To Get You Into My Life
06. Band On The Run
07. Ebony And Ivory
08. We Got Married
09. Maybe I'm Amazed
10. The Long And Winding Road
11. The Fool On The Hill
12. Sgt. Pepper's Lonely Heart's Club Band
13. Good Day Sunshine
14. Can't Buy Me Love
15. Put It There
16. Things We Said Today
17. Eleanor Rigby
DISC TWO
01. This One
02. My Brave Face
03. Back In The U.S.S.R.
04. I Saw Her Standing There
05. Twenty Flight Rock
06. Coming Up
07. Let It Be
08. Ain't That A Shame
09. Live And Let Die
10. Hey Jude
11. Yesterday
12. Ebony And Ivory with STEVIE WONDER
13. Get Back
14. Golden Slumbers - Carry That Weight - The End