PAUL McCARTNEY / FLAMING PIE SESSIONS (3CD)

型番 mccd-586/587/588
販売価格 6,500円(税込)
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ビートルズが解散してから四半世紀も経てば、当時のメンバー間のしこり、特にジョージとポールの関係性にも変化が見られた。4人はメンバー横断的に共演はあったものの、ジョンとポール、そしてジョージとポールの組み合わせは最後まで実現しなかった。リンゴのみ全員と共演経験があるし、ジョンとジョージも一緒にレコーディングしている。ポールはリンゴ以外の共演がない。この事実からもビートルズ解散劇の一端が垣間見ることが出来る。

しかし四半世紀という長い時間を経て、やっとビートルズ・アンソロジーというプロジェクトで、鬼籍に入っているジョンを除く3人のメンバーが初めて一堂に会したのである。初めて庭で3人が並んでいる姿をテレビで見て、ビートルズ・ファンは感慨深いものがあったのではないだろうか。そして新曲2曲を含む音と映像のアンソロジー・プロジェクトが立ち上がることとなったのである。その結束に重要な役割を果たしたのがジェフ・リンであった。ビートルズのメンバーは、プロデュースを「身内」のジョージ・マーティンではなく、あえて「外部」の人間に頼んだのである。

あくまで想像だが、ポールはこのプロジェクト実現のために、かなりジョージに譲歩したと思われる。アンソロジー2に「Within You Without You」のインストが収録されているが、これなどまさにジョージにかなり配慮した選曲と言えるだろう。そしてジョージとジェフリンは「Cloud 9」で既に一緒に仕事をしている。ジェフリンの起用もまた、ジョージへの配慮だったのではないだろうか。なにせ、このプロジェクトはジョージとポールの関係性が鍵だったからだ。そしてこのアンソロジー・プロジェクトにおいて、ポールはジェフリンの仕事に非常に満足したと思われる。何よりジェフリンはビートルズに対するリスペクトが感じられる。ポールは次のソロ・アルバムのプロデュースも、ジェフリンに委ねることにする。

ポールは1992年に「OFF THE GROUND」をリリースし、それに伴い大規模なツアーを行なったが、それが終わった後は、前述のように90年代中盤をアンソロジー・プロジェクトのために費やすこととなる。そしてソロ・アルバムの期間が開いた理由はそれだけではない。リンダの体調が思わしくなく、その治療にかかっていたことも後に判明している。そのリンダが参加した最後のアルバムが、ジェフ・リンをプロデューサーに迎えた1997年発表の「FLAMING PIE」である。発表こそ1997年であるが、レコーディング自体は1995年から行なわれており、アンソロジー・プロジェクトの延長上で生まれたものである。バンドで制作された前2作のアルバムと異なり、まるで「マッカートニー3」のように、ほとんどポールとジェフ・リンの多重録音で収録されている。プライベート・レコーディングのように、気を張らない肩の力が抜けた非常に落ち着いた雰囲気で、非常に優れた内容となっている。セールス的にも成功を収め、現在では名盤のひとつとして知られている。本作は、この「FLAMING PIE」のセッション音源を収録している。

「The Song We Were Singing」は、ポールの懐古趣味が溢れる素晴らしいオープニング曲である。常にかつて自分たちが歌っていた曲に戻る、という主題は、タイトルの主語がWeとなっていることからも、ビートルズ時代の自分たちを指しているというのがわかる。その実、懐かしい雰囲気を醸す名曲であると言える。ここに収録されているのは別ミックス音源で、ヴォーカルが前面に出たものとなっている。

「The World Tonight」は前作「Biker Like An Icon」を改題したのかと思うくらい、非常に曲調というかノリが似通った曲である。最初に収録されているのは激しいギターによるデモ音源。短いながら非常に迫力ある演奏が楽しめる。その他、ラフ・ミックスやバッキングトラックなどが収録されている。

このアルバムはライヴ活動を行なっていない時期のものとあって、ライヴで演奏されたことがない曲が多いが、「If You Wanna」も例外ではない。しかし、なんとここに収録されているのは1993年5月29日のサウンドチェックで演奏された「If You Wanna」なのである。アルバムで発表する実に4年も前に、一度だけサウンドチェックで演奏されていたという事実。しかもアコギと、ウィックスの奏でるアコーディオン、そしてピアノの音も加わっているようにも聞こえるが、非常にシンプルで、まるで呪文を聞いているかのような演奏となっている。メロディも同じで、歌詞もリリース・バージョンと相違ない。アレンジのみが異なっており、この時点で既に完成しているのが伺える。

ポールのパターンとしてアルバム序盤にアコースティックの小品を挿入するという傾向がある。「PRESS TO PLAY」の「Footprints」しかり、「FLOWERS IN THE DIRT」の「Distruction」しかり、そしてこのアルバムでは「Somedays」がそれに相当する。ここに収録されているのはラフ・ミックスの別バージョンである。

「Young Boy」はアルバムからシングル・カットされたキャッチ―なナンバーである。ポールはこの時期に出演したテレビ・ショウなどで積極的にこの曲をプロモーションしてまわった。本作に収録されているのはアコギによるデモ音源、別ミックス、ラフ・ミックスなどの数々である。

「Calico Skies」は2002年大阪においてステージ初演がなされた後、ツアーにおいても度々演奏されており、ポール自身気に入っているのだろう。ステージではバンドで演奏されているが、ここではスタジオ・バージョンと同じくアコギのみによるデモ音源を収録している。元々の曲調のせいだろうが、アコギのみの演奏でもオリジナルの雰囲気を損ねることなく、むしろ曲の良さが溢れるものとなっている

「Flaming Pie」はアルバムのタイトルとなったポールにとっても思い入れのある曲で、ステージでも度々演奏されている。「Flaming Pie」とは、ビートルズがデビュー前にジョンが夢に見たという「燃えさかるパイに乗ってきた男」のエピソードに由来する。ここではピアノによるデモ音源にバッキングトラックなどを収録している。

「Heaven On A Sunday」もまた、リンダのコーラスが印象的な美しい曲である。この曲の玉が転がるようなエレピに合わせてポールが非常に丁寧に歌うデモ音源は、まさに珠玉のテイクである。歌いまわしもオリジナルとは異なる。

そしてこのアルバム最大の名曲が「Souvenier」である。甘く切ないメロディが胸を打つポール史上最大の名曲のひとつ。このアルバムのテーマである懐古趣味を存分に発揮した歌詞も素晴らしく、詩人としてのポールが堪能できる作品となっている。残念ながらこの曲には短いバッキングトラックのみしかアウトテイクが残っていない。一部ポールによるヴォーカルが入っているが、この曲のアウトテイクがあるならばもっと聴いてみたいものだ。

「Little Willow」はダイアナ妃の追悼アルバムにも収録された、いくぶん「焼香」の香りがする鎮魂歌である。しかしそこに辛気臭さはなく、爽やかに手を振って大空に旅立っていく死者の姿が目に浮かぶ。このアルバム発表後しばらくしてリンダは死去するが、その際にこの曲が死去のニュースと共に多く流された。

「Rally Love You」はアルバムの中でも異彩を放つファンキーな曲で、ここでは短いながらドラムとベースによるセッション時の音源を収録している。

続いてディスク2である。本作のハイライトが、アルバムの実質最後を飾るこの「Beautiful Night」のセッション音源であろう。この曲は古く1986年には既にほぼ完成した形でレコーディングされていたことが現在では判明している。その1986年バージョンがディスク2のトラック1である。シンプルながらピアノだけなくドラムも入ったきちんとした演奏で、既に最終形に近い状態であることがわかる。おそらくこのままリリースしても通用する完成度であろう。リリース・バージョンと異なるのはエンディングくらいなもので、その分まだ未完成な印象は受けるものの、それは後付けの知識のせいであろう。美しくも非常に優れたデモ音源である。このデモ音源を元に、1997年になってエディット・バージョンも作られている。

続いて収録されているのは1996年の「Beautiful Night」のセッション音源で、ピアノだけの演奏によるデモ音源である。ポールのヴォーカルには何らエフェクトの類がかけられておらず、まさに生歌となっている。最終的に「Beautiful Night」は、前述のデモ音源の構成に、新たにエンディングに加えて完成となっている。そしてそのエンディングで最も特徴的なのは、すぐにそれとわかるリンゴのヴォーカルである。どうしても「Cary That Weight」を連想してしまうが、それもまたポールが意図的にリンゴを起用した理由であろう。ここではリンゴが参加したリハーサル、そして途中テンポを上げてふざけて同曲を歌う様子などを収録している。

1997年に入り、さらにオーケストラを被せるためのセッションが行なわれている。なるほど時間をかけて「Beautiful Night」を作り上げていく様子がよくわかる。おそらくポールはベースを弾きながら歌っているのであろう、途中からそこにオーケストラが加わって重厚さが増しているのがわかる。ここでもポールのヴォーカルは生歌で、なんら加工がなされておらず、耳元で歌っているかのようなゾクゾクする感覚になる。さらに注目は、オーケストラが大々的に奏でられるエンディングの部分であるが、まだリンゴのヴォーカルが加わる前のほぼカラオケ状態なのに対し、ポールが必死でアドリヴで歌っている箇所である。

おそらくデモ音源の段階で、基本的にこれ以上この曲には手を加える必要がないと判断したのであろう。ほぼデモ音源通りの構成、歌詞、メロディに、エンディングを加えて完成となっている。そのリンゴを加えたエンディングのみのトラックが続けて収録されている。もしかしたら前半とこのエンディング部分は別々にレコーディングされたものかもしれない。当初オーケストラのみ、そしてリンゴのヴォーカル、さらにギター・ソロを加えたトラックが収録されている。

「Great Day」は「Her Majesty」のようなオマケ的なトラックで、重厚な「Beautiful Night」で終わるのみならず、余韻を残すかのように加えられた短い楽曲である。しかしポールのお気に入りと見えて、頻度は僅かながら、過去に実際のライヴ・ステージでも演奏されたことがある。最初のトラックはなんとウイングス時代1974年にレコーディングされたもので、歌詞はまだないが基本的なメロディの着想がこの時点で既にあったということに驚く。ポールほど次々にメロディが浮かぶ天才的な才能があれば、あえてこんな昔のメロディを持ち出さなくても良いのだろうが、忘れ得ぬ何かがあったのだろう。

「Your School」はこの時期のアウトテイクで未発表曲である。ピアノによるデモ音源であるが、きちんとしたスタジオ・レコーディングである。Ooubu Joobuでも放送されたのでコレクターにとっては初登場というわけではないが、貴重な未発表曲である。

ディスク2の後半は1997年の春先から夏にかけて収録されたであろう、EPKのセッションを収録している。トラックリストの全てはオリジナルと異なる別テイク、別バージョンなので、それぞれが短いながらも聴き応えのある内容となっている。そして最後は「Flaming Pie」のアルバム・プロモーションのためのラジオ・スポットを3テイク収録している。英語のみならずスペイン語圏のものなど珍しいのではないだろうか。

最後はディスク3である。1997年にジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの作曲家コンビのトリビュート・アルバムが企画された。ポールはそのアルバムに彼らの作曲したビートルズ時代からの愛唱曲「Kansas City」をレコーディングした。「Hey Hey Hey Hey」とメドレーにならない単独での演奏である。アコギ1本での演奏ながらグルーヴを感じさせるパフォーマンスである。それにしてもポールがオールディーズを歌うと、常にどことなくカントリー調になるのは不思議なところである。

そして最後はアルバム「FLAMING PIE」がリリースされた時のラジオ・ショウを収録している。1998年3月放送された、アルバムの楽曲をポールの解説付きで聴こうというプロモーション番組である。ところがこのラジオ・ショウがただCDを流しておしゃべりするという単純なものではなく、ふんだんにアウトテイク、未発表曲などを盛り込んだスペシャルな内容なのである。しかも、おそらくポールの自宅スタジオで収録されたのであろう、ドラムやベースなど実際に近くに楽器を置いて、それを生演奏しながらのアルバム解説なのである。

例えばビートルズ時代の想い出と共に「Strawberry Fields Forever」を歌ってみたり、「Come On Baby」や「Welcome To The Castle」を即興で歌ってみたりと、非常にマニアにはたまらない内容となっている。「Heaven On A Sunday」は「For No One」に触発されて作った曲ということで、両曲を比較するかのように「For No One」のリフを奏でている。同様に即興でビートルズの「Because」を歌うところなど、短いながらそこまでサービスするのかと驚かされる。今となっては有名なエピソードになってしまったが、リンダからプレゼントされたエルヴィスが「Heartbreak Hotel」をレコーディングした時に使用していたベースを持ち、同曲を歌う様子も収録されている。途中にはリンゴのコメントも挿入されるなど、いかにポールがこのアルバムのプロモーションに力を入れていたかがわかる。

1997年発表ポールの名盤のひとつと考えられている「Flaming Pie」のセッション音源、レア・テイクを含むラジオ・ショウなどを集約したセッション・シリーズの最新作。リンダが参加した最後のアルバムであり、バンドから離れ宅録に近い形でレコーディングされた、リラックスした空気が充満している懐古をテーマとした、フィフティーズ・テイスト漂うアルバム「Flaming Pie」の魅力を存分に堪能できるタイトルである。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。

DISC ONE
THE SONG WE WERE SINGING
01. Different Mix

THE WORLD TONIGHT
02. Clean Electric Guitar Demo
03. Backing Track
04. Early Rough Mix - Different Intro
05. Second Rough Version Alternate Mix
06. Father's Day Vocals Center Channel
07. Father's Day Film Edit

IF YOU WANNA
08. Rehearsal/Soundcheck May 29, 1993
09. Clean Electric Guitar Demo

SOMEDAYS
10. Rough Mix Alternate Version
11. Strings Channel Mix

YOUNG BOY
12. Acoustic Guitar Demo
13. Alternate Mix
14. Rough Mix
15. Father's Day Film Mix

CALICO SKIES
16. Clean Acoustic Demo
17. In The World Tonight Performance

FLAMING PIE
18. Piano Rendition
19. Backing Track Channel Mix
20. Chris Holmes Mix 2016

HEAVEN ON A SUNDAY
21. Clean Electric Piano Demo
22. Monitor Mix

SOUVENIER
23. Backing Track

LITTLE WILLOW
24. Basic Track
25. Video Soundtrack

REALLY LOVE YOU
26. Drum & Bass Improvisations


DISC TWO
BEAUTIFUL NIGHT
1986
01. Original Version Rough Mix

1997
02. Original Version Edited Mix

1996
03. Piano Demo
04. Solo Piano Rendition
05. Rehearsal & Parody With Ringo
06. Session Highlights Composite

1997
07. Orchestra Session
08. Basic Track With Orchestra
09. Ringo's Vocal Track
10. Electric Guitar Overdub
11. Final Instrumental Mix
12. Piano Rendition From Radio Show
13. Video Soundtrack

GREAT DAY
14. Early Acoustic Rendition 1974
15. Leg Slap recording 1992 Channel Mix
16. In The World Tonight Performance

YOUR SCHOOL
17. Circa 1992-1994 Demo

EPK SESSION Spring - Summer 1997
18. Calico Skies
19. Flaming Pie
20. Young Boy
21. The World Tonight
22. If You Wanna
23. Heaven On A Sunday
24. Beautiful Night

FLAMING PIE RADIO SPOTS
25. Radio Commercial #1
26. Radio Commercial #2
27. Radio Commercial #3


DISC THREE
LEIBER & STOLLER ALBUM SESSIONS August 27, 1997
01. Kansas City

THE WORLD TONIGHT SPECIAL
02. When I'm Sixty Four

FLAMING PIE RADIO SPECIAL master version
03. Introduction - Flaming Pie
04. Strawberry Fields Forever
05. Come On Baby
06. Welcome To The Castle
07. Paul & Steve Miller about "Young Boy"
08. Harpsichord improvisations (For No One - Baby Baby)
09. Heaven On A Sunday
10. Souvenier
11. Electric Spinet - Because
12. About Elvis Presley - Bill Black's Bass - Heartbreak Hotel
13. Ringo Starr's Introduction
14. Great Day
15. Drums & Bass about "Really Love You"
16. Ringo about "Really Love You"
17. Paul about "The World Tonight"
18. Spanish Guitar & "Blackbird"
19. Paul about "Somedays"
20. George Martin about "Somedays"
21. Paul about "If You Wanna"
22. Milk Cow Blues
23. "Paperback Writer" Voxx Amps
24. Mini Moog
25. About "Used To Be Bad"
26. Penny Lane - Baby Don't You Do It
27. Calico Skies
28. Beautiful Night
29. About "Beautiful Night"
30. About "Flaming Pie"- End of The Show

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