マニア必携Mクローデル・レーベルよりビートルズ初期の映像集、1962-1963編に続き、1964年UK編がリリースになる。時期的にはビートルズがアメリカ進出し、世界的人気を博してからの凱旋後の1964年の初期映像集である。
本作の最初は1964年4月26日ニュー・ミュージカル・エキスプレスの受賞コンサートである。ポール・ウィナーズ・コンサートとも呼ばれている有名な映像である。ドロップアウトのない現在考え得る最高の画質で、低いマイクで窮屈に歌うジョンも含め、かなり勢いのある「She Loves You」は同曲のベスト・パフォーマンスといってもいい。実に素晴らしい演奏である。続く「Twist And Shout」でのジョンの熱傷もまた同曲のベスト・パフォーマンスと言ってもいい凄まじいものである。ジョンが左手に立ち、ポールとジョージが右手でコーラスという珍しい立ち位置。このような熱のこもった演奏はついぞ聴いたことがない、ライブ・パフォーマーとしてのビートルズの魅力が集約されたような演奏である。必見。
4月28日アラウンド・ザ・ビートルズから「Roll Over Beethoven」を収録。フィルム傷が散見されるが画質に優れた1曲を収録している。音声はライブ演奏ながらリアルタイムのものではなく事前に前撮りされたものでそれに合わせてのマイミングである。上目使いに目を輝かせて歌うジョージが可愛い。
1964年のブラックプールの映像は当日のドキュメンタリー映像である。何とも珍しいカラー映像で当時の雰囲気が伝わってくる。遊園地に隣接するオープンエアの会場でイベントが行なわれている様子。そして曲目不明ながら当日のビートルズのライヴ・ステージもカラー映像で収録されている。
10月3日シンディグの映像。演奏シーン自体が珍しい「Kansas City ? Hey Hey Hey Hey」で開幕する。演奏自体はゆったりしたものながら、楽しそうに上下に揺れながら歌うポールの独壇場である。ジョージの拙い間奏もまたライブ演奏ならではである。このシンディグは選曲が珍しく、ライブ映像が残されていないこのような曲を動いているビートルズの映像で見られるところに特長がある。それは次のジョンによる「I’m A Loser」も同様である。パリ公演での同曲の映像も残されているが、ジョンがディランのようにハーモニカ―・ホルダーを首から下げて歌うスタイルは非常に貴重である。パフォーマンス・スタイルのみならず曲自体もディランの影響が色濃く反映されている。このような珍しい当時最新の曲の中で、リンゴの「Boys」は古色蒼然した感は否めないが、ポールとジョンが左側に立ちコーラスをつけ、ジョージが右側にひとりで立つ光景も珍しい。間奏に入る前にリンゴが「オーライ・ジョージ!」と叫び、それに笑顔で応えるジョージの表情に注目である。このシンディグは流出経路の異なるバージョン違いの映像から「Kansas City ? Hey Hey Hey Hey」の1曲をさらに追加収録している。
日付不明ながらTONIGHTという当時の番組である。ブライアン・エプスタインが出版した著書に関するエピーのインタビューである。
10月14日SCENE AT 6:30というタイトルで知られる映像。下部にタイムコードが入った流出映像である。番組そのもので放送されなかった楽屋の様子に加え、「You Should Have Known Better」のリハーサル風景が非常に貴重なもので、初めて見た時はこのような映像があるのかと驚かされたものである。映画「ア・ハード・デイズ・ナイト」でも演奏シーンが見られるが、ここではまるで隠し撮りのようなスタッフ後方からの映像である。ジョンがクビをチョンと前に出しておどける様子が可愛い。まるで映画のワンシーンを見ているようだ。
10月20日ダンディーという都市を訪れた際のビートルズの映像である。会場の客席の様子から前座の演奏も含まれた当日のコンサートの映像である。野暮ったい前座の映像を見ると時代を感じられることは勿論、それらに比してビートルズがいかに洗練されていたかが伺える。そして司会者に促されてビートルズがステージ後方の幕から登場である。演奏曲は全て断片的ながら「Money」や「Things We Said Today」の演奏シーンが見所である。ステージと客席の近さは現在では考えられないもので、ビートルズの演奏と客席の盛り上がりが如実に理解出来る。
10月21日グラスゴーでの映像。こちらは短く、またサイレント・フィルムであるが、鮮明な画質でポールとジョージが1本のマイクをわけあってコーラスをつけている様子を見る事ができる。曲名は不明。
10月29日プリマス公演での映像。こちらも短いながら貴重なものである。最初に「We Love You Beatles」を歌うファンの映像。続いてコンサートにおいて絶叫するファン、カメラがステージに移ると「Twist And Shout」を歌うビートルズ。もっと見たい気にさせる。
11月14日THANK YOUR LUCKY STARSからの映像である。「I Feel Fine」「She’s A Woman」「I’m A Loser」と、初期から脱却して中期に移行したビートルズの大人びた憂いが感じられる。選曲は「BEATLES FOR SALE」のプロモーションで同アルバムからの曲である。「Rock And Roll Music」は日本公演の映像の印象が強いが、意外や演奏している映像は多くない。これはその内のひとつ。これが1964年英国における最後のテレビ出演となった。
そして本作の最後はボーナス映像として、カラー化したシンディグから「Kansas City ? Hey Hey Hey Hey」を収録している。本作の表ジャケットのように鮮明なカラー写真は存在するが、映像は白黒で収録されている。それを人為的にカラー化した実験的な映像である。アンソロジーにおける「愛こそはすべて」と同じ趣向だと捉えて頂きたい。
初期ビートルズのライブ映像を集めた貴重な映像集。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。日本語帯付。
April 26, 1964
01. Poll Winner's Concert
a. She Loves You
b. Twist And Shout
April 28, 1964
02. Around The Beatles
a. Roll Over Beethoven
August 16, 1964
03. Blackpool 1964
October 3, 1964
04. Shindig
a. Kansas City - Hey Hey Hey Hey
b. I'm A Loser
c. Boys
d. Ending Theme
e. Kansas City - Hey Hey Hey Hey (alternate version)
Date Unknown
05. Tonight Show
October 14, 1964
06. Scene At 6:30
a. Rehearsal
b. You Should Have Known Better
October 20, 1964
07. Caird Hall Dundee
a. Opening Act
b. Twist And Shout
October 21, 1964
08. Odeon Cinema Glasgow
October 29, 1964
09. ABC Cinema Plymouth
a. We Love You Beatles - Twist And Shout
November 14, 1964
10. Thank Your Lucky Stars
a. I Feel Fine
b. She's A Woman
c. I'm A Loser
d. Rock And Roll Music
BONUS FOOTAGE
October 3, 1964
11. Shindig Colorized